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チベット・中国紛争解決促進法(2024年米連邦議会制定法)

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2024年7月13日

チベット・中国紛争解決促進法(2024年米連邦議会制定法)

https://www.congress.gov/bill/118th-congress/senate-bill/138/text/enr?format=xml

[第118回米国議会への提出法案]

[米国政府印刷局より]

[S. 138 記録法案(ENR)]

2024年1月3日水曜日より第118回米連邦議会第2会期がワシントン市にて開催され、チベット政策法(2002年)の一部条項を修正する法案が、上下院にて議会全体として次のように可決された。

第1条 簡易名称

当法は「チベット・中国紛争解決促進法(Promoting a Resolution to the Tibet-China Dispute Act)」をその簡易名称とする。

第2条 認識内容

米議会は以下を認識する。

(1) 中華人民共和国(以下中国)政府と、ダライ・ラマの代表者もしくはチベット社会で選ばれた指導者との無条件かつ実質的な直接対話を奨励し、対立を解決する解決策を追求することは米国の長年の方針である。

(2) 中国政府とダライ・ラマの代表者の間で2002年から2010年に行われた9回の対話は対立への解決策を生み出すことに失敗した。2010年1月以降、両者間で正式な対話は行われていない。

(3) 対話再開の障害となっているのは、中国政府がダライ・ラマとの実質的な対話に課している条件である。かかる条件にはチベットは古来から中国の一部であるという発言をダライ・ラマに要求する点が含まれており、ダライ・ラマがこれを事実でないとして拒否しているため対話が進展していない。

(4) 『市民的及び政治的権利に関する国際規約』第1条ならびに『経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約』第1条は、「すべての人民は自決の権利を有する。かかる権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する」と規定している。

(5) チベットが古代より中国の一部だったという見解を米国政府が採ったことはかつて一度もない。

(6) 中国は『市民的及び政治的権利に関する国際規約』を1998年10月5日に調印、『経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約』を2001年3月27日に批准している。

(7) 国際法なかんずく国連総会決議2625によれば、自決権とは人民が自らの運命を決める権利であり、この権利の行使からは、独立、連邦制、保護、自治、国家内の完全な統合など、さまざまな帰結が生まれる。

(8) 1961年12月20日に採択された国連総会決議1723は、「チベット人からその自決権を含む基本的人権と自由を奪う行為の停止」を求めている。

(9) 2022年5月26日に行われた演説『米政権の中華人民共和国へのアプローチ』においてアントニー・ブリンケン国務長官は、「ルールに基づく国際秩序の基礎文書には国連憲章や世界人権宣言などがあり、人民の自決権、主権、紛争の平和的解決などの概念が盛り込まれている。これらは欧米諸国が作った概念ではなく、全世界が共有する希求だ」と述べた。

(10) 2002年制定のチベット政策法(22 U.S.C. 6901注記)、および2020年制定のチベット政策および支援法(公法116-260号のFF部IIIタイトル副題E)は、「チベット人の人権や独自の宗教、文化、言語、歴史的アイデンティティを推進する」よう米国政府に求めており、チベット人独自の宗教、文化、言語、歴史的アイデンティティを認めている。

(11) 国務省の『人権および宗教の自由に関する報告書』は、中国政府によるチベット人の組織的抑圧やチベット人による中国の政策への抵抗・反抗について一貫した文書化を行なったものである。

(12) 2002年のチベット政策法(22 U.S.C. 6901注記)は、米チベット問題特別調整官の中心的な目標は中国とダライ・ラマ、その代表者、あるいはチベット社会の民選指導者との実質的な対話を促進することだと明記している。

第3条政策方針声明

米国の政策方針は次のとおりである。

(1) チベット人は独自の宗教的、文化的、言語的、歴史的アイデンティティを持つ民族である。

(2) チベットと中国の紛争は、(国際連合憲章などの)国際法に従い、無条件の対話によって平和手段で解決されるべきである。

(3) 中国は、チベットの歴史、民族、(ダライ・ラマ制度などの)制度についての誤まった情報の拡散を停止すべきである。

(4) 中国には『市民的及び政治的権利に関する国際規約』を批准し、『『経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約』』のすべての義務の遵守を奨励する。

(5) 米国政府は2020年制定のチベット政策および支援法に従い、以下を行う。

(A) 中国政府とダライ・ラマ、その代表者、またはチベット社会の民選指導者とのあいだの無条件の実質的な対話を促進する。または対話の可能性を高める活動を行い、それによってチベットに関する交渉を合意に導く。

(B) チベットに関する交渉の合意という目標に向けた多国間の取り組みで他国政府と協調する。

(C) 中国政府に対し、独自の歴史的、文化的、宗教的、言語的アイデンティティについてのチベット人の希求に対処することを奨励する。

第4条米国議会の意見

米国議会の意見は次の通りである。

(1) 中国の政策当局や中国共産党が主張する、チベットが古代より中国の一部であったという主張は歴史的に正しくない。

(2)中国の現行の政策は、チベット人が自らの宗教、文化、言語、歴史、生活様式、環境を保全する力を体系的に抑圧している。

 (3)ダライ・ラマまたはその代表者との実質的対話に入るべき、またはチベット人の希求などについて交渉による解決に至るべきであるという米国の期待に中国政府は応えていない。

(4)米国の外交活動は、中国および中国共産党によるチベット関連の虚偽情報、なかんずくチベットの歴史、民族、ダライ・ラマ制度を含む諸制度に関する情報の歪曲を阻止すべきである。

第5条2002年制定チベット政策法の修正

(a) チベット交渉— 2002年チベット政策法(22 U.S.C. 6901注)の第613条(b)を以下のように修正する。

(1) 第2項の「; and」を削除し、「;」を挿入。

(2) 第3項の、最後のピリオドを削除し、「; and」を挿入。

(3) 文末に次の段落を新たに追加。

(4) 「中華人民共和国政府および中国共産党によるチベットに関する虚偽情報、なかんずくチベットの歴史、民族、ダライ・ラマ制度をはじめとする諸制度に関する情報の歪曲に対抗する努力。」

(b) 米チベット問題特別調整官—2002年チベット政策法(22 U.S.C. 6901注)の第621条(d)を以下のように修正する。

(1) 第6、7、8項をそれぞれ第7、8、9項に変更する。

(2) 第5項の後に次の段落を新たに挿入する。

「(6) 米国務省および国際開発庁内の関連部署と協力し、米政府の声明および文書が、中華人民共和国政府および中国共産党からのチベットに関する虚偽情報、なかんずくチベットの歴史、民族、ダライ・ラマ制度をはじめとする諸制度に関する虚偽情報に適切に対抗すること。」

(c) 定義—2002年チベット政策法(22 U.S.C. 6901注)の文末に次の条を新たに追加する。

第622条定義

当法において「チベット」とは以下の地域を指す。

(1) チベット自治区

(2) 中国政府が2018年時点でチベット人の自治地域として指定している以下の地域。

 (A) 甘粛省内のカンロ(甘南)チベット自治州とパリ(天祝)チベット自治県

 (B) 青海省内のゴロク(果洛)チベット自治州、マロ(黄南)チベット自治州、ツォジャン(海北)チベット自治州、ツォロ(海南)チベット自治州、ツォヌブ(海西)モンゴル族およびチベット自治州、およびユルシュル(玉樹)チベット自治州

 (C) 四川省内のガルゼ(甘孜)チベット自治州、ンガワ(阿坝)チベット族およびチャン族自治州、およびムリ(木里)チベット自治県

 (D) 雲南省内のデチェン(迪慶)チベット自治州」

第6条チベットに関する情報歪曲に対抗する資金の使途

2020年チベット政策支援法(公法116-260の第FF部第III編のサブタイトルE)第346条等に基づき確保された資金は、中国政府および中国共産党が発信するチベットに関する虚偽情報、なかんずくチベットの歴史、民族、ダライ・ラマ制度をはじめとするチベットの諸制度に関する情報歪曲に対抗するために利用可能である。

下院議長

米国政府副大統領兼上院議長

(和:下山明子)

注:この米国議会の決議は、2024年7月12日に米国のジョー・バイデン大統領が署名し、法律となった。

オリジナル記事


(翻訳:下山明子)