2025年3月22日

ジュネーブ:2025年3月20日、ジュネーブにて開催された第58回国連人権理事会(UNHRC)において、チベット事務所ジュネーブの国連人権擁護担当官であるプンツォク・トプギャル氏が演説し、チベットのヤルツァンポ川で計画されている、メトクダムの建設が引き起こす重大なリスクについて警鐘を鳴らした。メトクダム建設は、チベットの環境や住民、さらには地域の安定に対して深刻な脅威を及ぼす。トプギャル氏は、このような大規模なインフラ開発はチベットの脆弱な生態系に大きな損害を与え、南アジア全体の水の安全保障が危険にさらされる可能性を強調した。
チベットは「第三の極」と呼ばれ、世界全体の環境バランスを維持する上で重要な役割を担っている。メトクダム建設に伴う過度な森林伐採や地震リスクの増加、氷河融解の加速は、この貴重な環境バランスを脅かす要素であり、これらはまた、気候変動を加速させる要因でもある。さらにこのダム建設は、異常気象を引き起こしたり季節風の移動経路を変化させたりする可能性があり、その結果、世界規模での環境問題をますます悪化させる懸念がある。
チベットに住むチベット人は、メトクダム建設によって居住環境の破壊や砂漠化、伝統的な農業の崩壊といった最も深刻な影響を受けることになるだろう。これらの影響はチベット人の暮らしを脅かし、食糧不安を深刻化させ、最終的にはチベット人の故郷からの移住を引き起こし、祖国でのさらなる疎外につながる恐れがある。
インドとバングラデシュではブラマプトラ川として知られるヤルツァンポ川は、何百万もの人々にとって重要な水源である。この川沿いにダムを建設することは、その自然な流れを大きく変える可能性があり、下流での水不足や壊滅的な洪水のリスクを高めることになる。このような開発は、近隣諸国間で地政学的緊張を激化させ、また、南アジアの平和と安定を危うくする可能性もある。
トプギャル氏は国際社会に対して、短期的な経済的利益よりも環境の持続可能性を優先するよう懇願し、致命的な生態系の破壊を防ぐために各国が協力し、透明性のある行動を取るべきだと訴えた。気候危機への対応と脆弱な生態系の保護には国際的な連帯が不可欠である。人々と環境の両方を危険にさらすような建設計画は中止し、撤廃すべきである。ジュネーブのチベット事務所は、メトクダム建設が取り返しのつかない被害を引き起こす前に、各国政府、環境保護団体、国際機関に対し、そのプロジェクトを中止させるための活動の取り組みを引き続き呼びかけている。
— チベット事務所ジュネーブによる報告
(翻訳:ふんまいき)