2025年2月27日

ダラムサラ:2009年のこの日、チベット国内から焼身抗議運動の波が立ち始めた。アムド地方ンガバのキルティ僧院にいた27歳の僧侶、タペイが、地元の当局が僧院での祈祷式を中止したため、自らに火をつけたのである。これは、チベット国内における最も過激な非暴力抵抗活動の最初の例であり、宗教と文化の自由を侵害する中国の抑圧的な政策に対する、チベット人コミュニティの根深い不満を反映したものであった。
タペイの話は、高まる緊張と中国の残忍な弾圧に対して反対の意思を表示するために、一部のチベット人が取らざるを得ないと感じている、思い切った手段の証となるものである。特に、2008年にンガバ県で抗議活動があった際に、当局の対応によって妊婦や子供、10代の学生を含む多数の民間人が死亡した後、緊張は高まり、残忍な弾圧が行われた。
中国当局がチベットの正月の伝統的な祈りの儀式を中止した後、タペイはチベットの国旗とダライ・ラマ法王の写真を掲げ、自らに火をつけた。タペイは炎に包まれながら軍警察に撃たれており、彼の抗議への対応は、こうした示威運動に対して厳しい措置が取られることを明確に示している。その後、家族や宗教関係者のほとんどの人達がタペイとの接触を禁じられ、彼が複数の病院に姿を消したことは、中国がこのような事件を表ざたにならないように、人目に付かないように扱っていることの例証である。
国営メディアの報道が限定的であることや、入院中のタペイとの接触が制限されていることからもわかるように、こうした事件に関する情報が組織的に抑制されていることは、チベットにおいて、より広範に渡る情報統制が行われていることを思い起こさせる。外国メディアによって第一報がもたらされたにもかかわらず、彼の抗議の状況と結果は、一般の人々にはほとんど隠されたままであっ。
現在までに、チベット人の焼身抗議活動は少なくとも157件確認されており、最近の事例には、2022年に起きた81歳という高齢のチベット人、タプン氏の抗議活動がある。タプン氏は抗議活動中に負傷して倒れた。これらの抗議活動は僧侶と、学生や農民、教師、父母、祖父母など、さまざまな立場の一般のチベット人によって行われている。
こうした抗議活動に対して中華人民共和国(PRC)政府は、チベット人の正当な嘆きや訴えに対応するのではなく、むしろ警備対策を強化し、焼身を犯罪とし、焼身抗議をした人の家族や、その人が所属していた寺院やコミュニティを処罰している。こうした対応にもかかわらず焼身抗議活動が続いていることは、中国の弾圧下で、宗教の自由、文化の保護、人権に関して、チベット人が深く嘆いていることを反映している。
これまで、国連人権高等弁務官事務所を含む国際機関は中国に対し、チベット人の権利を尊重し、国連職員や外国のメディアが妨害されることなくチベットに立ち入ることを許可するよう求めてきた。複数の国の政府がこうした状況に対して懸念を示しており、チベットの危機に対処するために、多数の国による外交的介入を求めている。
チベット人の焼身自殺者を認識することは、同胞であるチベット人の苦しみをこれ以上見ていられなくなった人々が払った、究極的な犠牲を厳粛に証すこととなる。世界の人々の目を引き、訴えるための最後の必死の行動として、自らの体を火に投じるという深甚(しんじん)な抗議行動に出ている人たちがいるにもかかわらず、中国の支配下でチベットの状況は悪化する一方である。チベットの文化や言語、宗教の自由の組織的な抹殺は止むことなく続いており、こうした必死の行動に対する監視の強化、強制同化政策、環境搾取は減少するどころか激しさを増している。この悲劇的な現実は、最も過激な形態の非暴力抵抗活動ですら、国際社会の力を意味ある行動に向けることができず、中国の圧制下で、チベットの将来が一層の危険にさらされるままにされていることを明確に示している。
-国連、EUおよび情報・国際関係省チベット人権擁護課人権デスクによる報告
(翻訳:T.M.)