(2007年7月25日 ドイチェ・ヴェレ(Deutsche Welle))
23日(月)、ドイツ訪問中のダライ・ラマ法王が、ハンブルグでグループインタビューに応じた。
ドイチェ・ヴェレ: 猊下、チベットでの人権状況についてお話ください。
ダライ・ラマ法王: 依然として、非常に深刻です。一ヶ月ほど前、中国の刑務所で8年間を過ごしたというチベット人に会いました。彼がラサ近郊の村で犯した唯一の罪は、自分の気持ちを言葉に出して言った、ということだけでした。
ドイチェ・ヴェレ: 猊下がハンブルグでチベット問題について発言なさったのをうけて、中国から激しい反応がありました。これについては、驚いていらっしゃいますか?
ダライ・ラマ法王: いいえ、全然。たとえ私が沈黙の中で暮らしていても、常になにかしら糾弾されますから。彼らは、いつもそうなのです。
ドイチェ・ヴェレ: ドイツ政府のスタンスについては、どうお考えですか?チベット問題について、ベルリンは十分な対応をしていると思われますか?
ダライ・ラマ法王: ドイツ政府は、他の政府と同じです。つまり、基本的に同情的です。(チベット問題に関して)なんらかの関心を持っていることは確かです。問題は、それが適切なものであるかどうかです。私たちは、国際世論がこの問題に関心を示すことに感謝しています。それは、必要なことですし、助けになります。
ドイチェ・ヴェレ: 猊下が外国を訪問なさる時、目的としていることは何ですか?
ダライ・ラマ法王: 私の主要目的と動機はチベット問題ではありません。むしろ個人、家族、社会がもっと幸福になるために人間の価値(訳注:思いやり、慈悲、自分を律する心など)を促進すること—ある意味、それによって人類がもっと幸福になること — それが私の目的です。そこにおいて、私は貢献できると考えています。
私は、人類の一人一人が、世界をより良くする責任を負っていると思います。私はそう確信するとともに、それを推進すめるために常に努力しています。
私の第二の目的は、宗教と宗教の調和です。私がインドでおこなう法話には、中国人の参加者がどんどん増えています。中国政府は中国人がインドへ来るのを阻止しようとして、時に制限を加えますが、それにでも何人かの中国人は必ずやってきます。そうした中国人の多くはチベット人コミュニティーを目にして「中国で聞いていたのとは全然違う」と言います。結果として何らかの良い衝撃を受けるようです。
ドイチェ・ヴェレ: ご自分が最後のダライ・ラマ法王だとおっしゃったことがありますが、これについてご説明いただけますか?
ダライ・ラマ法王: 私は、すでに1969年の頃から、ダライ・ラマ制度を継続するか否は、チベット人民の考え次第である、と正式に表明しています。ですから、古くからのダライ・ラマ制度はもはや現代にふさわしくない、と多くのチベット人が判断すれば、ダライ・ラマは存在しなくなるでしょう。
もし私が、今すぐにでも死ねば、大多数のチベット人はおそらくこの制度の存続を願うでしょう。もし私があと20年、30年生きたならば、違ったことになるかもしれません。それはそれでかまいません。それは、尊厳ある終焉になることでしょう。
ドイチェ・ヴェレ: チベットに帰りたいと願うことはありますか?
ダライ・ラマ法王: ええ、もちろん。チベット人はみんなホームシックにかかっていますし、祖国を見たいと願っています。私もその一人です。しかしそれと同時に、私は僧侶です。精神的にも個人的にも、出生地というのはさほど重要ではありません。チベットには「ふるさとは、あなたが心地よく感じるところ。両親は、あなたに良いことをしてくれた人たち」(編者注:法王はこれをチベット語で述べた)という言い回しがあります。ハンブルグは大変に雰囲気の良い街ですので、私はとても心地よく過ごしています。この9日間、私はここが本当のふるさとのように感じています。メディアの方達も含め、私のために働いてくださる方々は、皆、微笑にあふれていました。まるで、皆が友人のようです。